パートナーがギャンブル依存性になったとき
周囲から見えないギャンブル依存症
ギャンブル依存性なんて他人事だと思っていました
夫の帰りが遅いのは仕事が忙しいからだと思っていました
どんなに帰宅が遅くなっても家で夕食を食べ、朝食後、弁当を持って決まった時間に出社する夫を支えるために、家事・育児をこなしパートに出るのも当然のことと思っていました
夫の家での役割は、週末、家族で出かける(主に夫の実家)ときの運転やエアコンの掃除・ファンヒーターの片づけ・洗車くらいで、それがなければTVで野球や相撲を見たりPCをいじって過ごしていました
そして、本屋に行くとか薬屋に行くとか、あるいは散歩だとか言って家を出ていくことがよくありましたが、子どもたちが小学校高学年にもなれば、家にいられるより家事の邪魔にならなくていいくらいに思っていたのです
ある時期までは、私が夫の銀行口座を管理していましたが、小遣いが足りないと言われキャッシュカードを本人に渡しました 住宅ローンや光熱費・保険料・生協の購入代・塾の月謝などは引き落としになっていましたから、小遣いに使えるお金はそれほどないのがわかるだろうという考えでした
私は甘かったのです
ギャンブル依存症の人は平気で嘘をつく
はじめ、夫は、カードを落としたとか失くしたとか言ってごまかしましたが、 いつのまにか残高不足で引き落としできなくなってしまいました
夫がパチンコをやるということは知っていましたが、まさかそこまでとは思ってもみませんでした
通帳を見ると、同じ日に2回も3回も引き出したり、それも営業時間外手数料を取られていたりしたのです 節約を心がけてやりくりしていた私には信じられないことでした
夫を問いただすと、ストレス発散だとは言ってもパチンコだとは認めません
普段その影を見せないギャンブル依存症の人ほど豹変する
都合の悪いことには黙ってしまい、逆に苛立って手を挙げる
実際に明らかな暴力を振るわれたことこそありませんでしたが、大きな声で威嚇したり睨みつけられたことはありました まるで知らない人のようでした
夫にとっては、普段私が見ていた姿の方が作り物だったのでしょう
とにかく、話し合うことなどできませんでした 何に使ったか言わないので解決しようにも手段がないのです
後を付けて証拠をつかもうと考えたこともありましたが、夫のことでこれ以上エネルギーを使う気力は残っていませんでした
子どもたちの生活をまもるために自分の仕事を維持させるのが精いっぱいでした
嘘をごまかすために嘘をつく
どうしたら立ち直ってくれるのか
「これは私が何とかするから、あっちはあなたが必ず払っておいて」
やる気を引き出すために私が少しでも譲歩すると、直ぐに突け込んできました
携帯電話代の支払いが滞り、振込用紙を探すため夫のカバンを調べたとき、パチンコ店のプリペイドカードや宝くじの購入レシートが出てきました
生活費は私に払わせておきながら、自分は3万円も宝くじを買っていました
ギャンブル依存症の人は宝くじで生活を立て直そうと考える
何度も念を押し、大丈夫だからとやかく言うなと言われていた上の子の大学の授業料を遅延した上に払えないと言ってきたのは、サマージャンボの抽選発表日の後でした
このとき私は、自宅の名義を自分に変えました(婚姻期間20年以上の夫婦間贈与の特例を利用)
夫名義だった子どもたちの学資保険・教育保険・夫の生命保険はすでに解約されていました 証書は私が管理していましたが、保険は、夫本人の申し出で借り入れの担保となり解約に至っていました
私はパート先の人事部にかけあって子どもたちを私の扶養に入れ、アルバイトを掛け持ちして連日働き続けました
相手の情に付け込む消極的詐欺の手口
心配して少しでも寄ってくる人に対し夫は、時には苦労話をし、時には泣きつき、時には明るい未来展望を語ってお金を出させていたようです
後日、親類から、転職の際の保証人を頼まれてサインし就職祝いを渡したが、その後の連絡がないと言われたことがありました
夫は、離れて暮らしていた母親の治療費がかかるからと言って生活費を入れませんでしたが、実際は母親の年金もを使い込んでいたらしく、入院費用の支払いも滞っていました
夫の母親が亡くなったのを機会に、夫にはその母親の住んでいた団地に移ってもらいました
私は毎月、(名義人である夫に使われてしまう恐れがあるため)住宅ローンの返済日直前に相当額を入金し、子どもたちと自宅に住みとどまりました
2回目の借金清算のとき、離婚届にサインをもらい、次にこんなことがあったら私の都合で出させてもらうと了承を得ていましたので、別居後2年目に正式に離婚しました
ギャンブル依存症の底なし沼
でも、これで終わりではありませんでした
後になって分かったことですが、下の子は父親にそそのかされて上の子の倍の奨学金を借りており、働くようになった上の子には無心の連絡が来るようになりました
私にはもう他人になりましたが、子どもたちには永遠に父親なのです
私から父親の悪口を聴きたくない2人の子どもは、私を通すことなく父親と対応することを選びました もちろん元夫も、私に知らさずに子どもたちと連絡を取り合いました
彼からは、子どもたちに、私への不満や自分に都合の良い作り話が語られたことでしょう
昔の私が見抜けなかったように、彼らもまたギャンブル依存症の父親の毒牙にかかってしまいました
人間は弱い生き物だとつくづく思います
私は陰ながら、子どもたちを支えてゆく覚悟です
ギャンブル依存症に関する本
精神科医でもある作家・帚木蓬生先生が『「やめられない」ギャンブル地獄からの生還』という本を書かれています 涙が止まりませんでした
本人に治す気があれば、グループワークなどやりようもあるのでしょうが、元夫の場合、大変難しいことのように思えます 全部失ってしまわなければ始まらないのですから 巻き添えになる人間にはたまりません
また、同じく帚木蓬生先生の『「ネガティブ・ケイパビリティ」答えの出ない事態に耐える力』の中では、それでも生きてゆくための心の納め方が説かれています
今、苦しんでいる人の助けになる本です
というわけで、自分の心を見つめ直すために、今までの経験を書いてみました
どなたかの参考になれば幸いです (参考にするような立場の人が少ないことを祈りますが)
余談ですが、子どもから借りて読んだ羽海野チカさんの『3月のライオン』に出てくる3姉妹の父親のイメージが、元夫にそっくりで驚きました