聞いて欲しい独り言

こんな人も生きてますよ 離婚、パート・アルバイトの掛け持ち、子どもの独立、そして息子家族との同居、親のこと~

東電の楽観主義バイアスについて思うこと

台風15号

まずは、台風15号による被害に遭われた多くの方に、お見舞い申し上げます

千葉県などの停電被害に対する東電のお粗末な対応について、学識経験者等のコメントが発表されていますが、その中に「楽観主義バイアス」という言葉が出てきました

これについて以前から思うところがありますので、少し書かせていただきます

 

東電の楽観主義

今回、東電の担当者は、被害の全容がつかめないまま希望的観測で復旧の見込みについて言及してしまったわけですが、住民のライフラインを掌る巨大企業としての危機管理が甘いにもほどがありますね

天下東電、今まで大丈夫だったから許されてきたからと、危機感のない言動を繰り返して、被災者を惑わし、裏切り、苦しめてしまいました

実際の現場では、作業員や技術者が必死になって対応していたと思いますが、現場の見えていない中央の人間は、自分がやるつもりもないので人聞きの良いその場しのぎの発表になったのでしょう

デジャヴかと思いました

 

楽観主義バイアスは繰り返す

そうです、この楽観主義バイアスは、一時的なものではありません、バイアス=偏りですから

三半規管に支障があって平衡感覚がとれなくなると、本人はまっすぐ歩いているつもりでも、だんだん曲がって行き、終いには円を描くようにくるくる回ってしまうことがあります

傍から見れば明らかに道を逸れているのに、本人は気づかないのです

周りから指摘されても、思考回路が偏っている人間には、それがわからないのではないでしょうか

東電の場合は法人格ですが、組織としての楽観主義バイアスに陥っていると言わざるを得ないですね

 

ギャンブラーこそ楽観主義バイアスの落とし子

今日は負けちゃったけど、明日になればまたきっと勝てる

この前は5万円も勝ったから、昨日と今日3万円くらいすったって大丈夫、大丈夫

今月分の給料もうなくなっちゃうけど、宝くじが当たれば全然余裕~

自信がなければもっと努力研鑽するものだと思いますが、自惚れというか何か根拠のない自信があって、いつも自分はどうにかなると思ってしまう人がいますよね

ギャンブラーは、まるで楽観主義バイアスに絡めとられちゃっている見本のような人が多いけれど、そういう人に限って自分はチャレンジャーだ、くらいに考えているのでなないでしょうか

前向き、プログレッシブなどと自己表現したがる人には注意しなくてはなりません

 

 

楽観主義者と悲観主義

さて、楽観主義があれば、反対の悲観主義もあります

リスク管理がご専門の島崎敢さんの「心配学」によると、食品添加物や医薬品の使用基準を決める際には統計上すこぶる悲観的数値を用い、また極めて可能性の低い副作用等に言及するのだそうです

それが原因かも知れない副作用がゼロでは無い以上、消費者・利用者にそれを告げた上で選択・使用してもらうしかないわけですが、販売されている・使用認可が下りている時点で、効能の方が圧倒的に大きいということです

しかしメディアの報道や人の噂話は、稀有な事象こそを騒ぎ立てるので、サメに食われるかもしれないから海には行かない、などと見当違いとも言える心配をする人が後を絶たないというわけです

すごく納得しました

正に楽観主義バイアスと反対の悲観主義バイアスです

 

リスクマネジメントと悲観主義

医者にかかってみると経験することですが、この手術をするにあたってはこんなにリスクがありますけどいいですね、と手術するしかない患者に向かって恐ろしい副作用や危険性を並べ立ててサインさせますよね

医者および病院は医療過誤などによる訴訟の賠償額や経営上の損失の大きさから、早い時点からリスク管理を徹底しているようです

そもそも、TVドラマじゃあるまいし人間のやることに完璧なんてありません

自然科学の分野だって解明されてないことの方が多いのだから、医者が万能だなんて誰も思っていません

病気になってしまったら自分では治せないから医者を頼るのです

医者がプロとして誠意ある対応さえすれば、結果で訴訟になることはないのではないでしょうか

医者だってもちろん、患者やその家族の期待に応えたいと思い、ベターな結果のためにベストを尽くす、と信じたいところです

しかし、そう言い切れないから、威圧的になってでも言質を取る方に注力していると思わざるを得ません

悲観主義バイアスは、言い逃れのためのリスクマネジメントですね

 

楽観主義バイアスも悲観主義バイアスも不誠実な証拠

つまり、どちらも、相手に対してあるいは自分に対して不誠実な証拠だということです

他人事で済まそうという考えや、自分さえよければいいという考えが、周囲を不自由にしていることにもっと気付かなくてはなりませんね

現実と正面から立ち向かい、誠実に対処していけば、人々をこれほど苦しめることはなかったんです!

こんなことを言ったところで、楽観主義バイアスは簡単に修正できるものではありません

公共性の極めて高いライフライン大企業はリスクマネジメントこそが生命線ですから、東電にはもちろん、バイアスを振り切って修正してもらわなければなりません

そのためには、日本人には苦手な、それを監視しもの言う利用者になることも大事でしょう

楽観主義バイアスは完全否定されるものか 

しかしベンチャー企業ならどうでしょうか?

個人の責任で結果をすべて引き受けることのできるベンチャーならば、成功すれば新たな価値を生み出すことができ、失敗しても当人がダメージを受けるだけで済みます

当然のことながら、多くのベンチャー、スタートアップは高い理想を掲げながらも綿密な計画と技術の構築を重ねているはずです

彼らの多くは、1度や2度の失敗でくじけることなく、挑戦を繰り返します

これこそ楽観主義バイアスとは言わず、彼らは、失敗を糧に、より念入りに前進を試みる挑戦者です

彼らのうち成功するのは何パーセントくらいでしょうか

そこから漏れた、最後まで成功しなかった人をギャンブラーと呼んでしまうのは気の毒ですが、初めから当たって砕けろな思いつき起業家も含めて、社会に貢献していると思うのです 

だからこそ、政府も今、国家戦略特区の構想に力を入れており、スーパーシティ構想なども盛んに取り上げられているのではないですか

社会全体を前に進めるようなとき、石橋を叩いても渡らないような心配性の悲観主義バイアスは足枷にしかなりません

特に今の日本のように物質的な充足感のある社会では、新たな需要を生み出すことが経済の活性化に必須です 

そこに首を突っ込める無鉄砲さは、政府や自治体の周到な計画性とともに、これからの社会にも、とても大きな役割があると思うのです

世界経済の歴史を動かしてきたのも全て、そうした人たちの成し得たイノベーションに違いないのですから